ウエタツです。
今回は、西洋諸語の「源流」ともいえる、ラテン語 について、書いてみたいと思います。
ラテン語?ラテン語なんて、今じゃ使ってるとこないし、「死語」なんじゃないの? と思われるかも知れません。
確かに、今現在「公用語」として使われているのは、バチカン市国のみ、それも教会の文書などがメインで、日常的に使われているのはイタリア語ということですから、あながち間違いではありません。 (写真は、サン・ピエトロ大聖堂)
しかし、前に「ロマンス諸語・ゲルマン語派」 で見たように、ラテン語から 、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語等は派生してきており、また「フランス語を勉強すると、英語が伸びる?!」 で見たように、1066年のノルマンコンクエストによって、フランス語の大量流入を受けた英語、またドイツ語をはじめゲルマン語派も大きく影響を受けております。
こうした「祖語」「源流」である言葉を学ぶことは意義のあることであり、事実、ラテン語の知識は一定の教養と格式を表すもの として、西欧諸国では学ばれてきております。
また言語の「学習」という面からも、ラテン語には、西欧諸語の、凝縮されたエッセンス が詰まっているのです。
更に、日常会話としては、死語に近いともいえますが、フィンランド国営放送では、ラテン語のラジオ番組があったり、また欧米知識人の間では、詩や小説をラテン語で書いたりと、根強い人気があるのです。
ラテン語の歴史
元々は、古代ローマを中心とした地方で使われていた言語で、「古ラテン語」 と称されるものがありました。
その後、前3世紀頃から、ギリシア文化の影響を大きく受け、ローマ最大の詩人ウェルギリウス(Vergilius)、『ガリア戦記』の、あのカエサル(Caesar)の活躍した、前1世紀頃に、現代に伝わる「古典ラテン語」 と呼ばれるものが完成をみます。「書き言葉」として完成をみた古典ラテン語ですが、一方で、兵士や商人、庶民の間では、「話し言葉」として独自の変化・展開をたどることになります。「俗ラテン語」 と呼ばれるものです。
この「俗ラテン語」が、幾世紀を経て、各地に拡がり、「ロマンス(ローマ)諸語」 として、イタリア語、フランス語、ポルトガル語等々へと変化していくのです。
書き言葉としての「古典ラテン語」は、中世の一時期に多少のくずれはあるものの、ほぼそのままの形で、近現代へと、西欧諸国における、いわば「共通言語」 として受け継がれてきております。
特に、学問的世界では、①学術用の語彙が整備されている、②死語であるため、文法的な変化などがない、③中立的である、等の理由から、 ラテン語は、なお権威ある言葉 であり、世界的に高い地位を有する言語 であるといえます。以下に、具体例を挙げてみます。
学術用語として(医学用語、解剖学用語)
cholera コレラ。
rheumatismus リューマチ。ラテン語としては「レウマティスムス」。
bronchitis 気管支炎。気管支(bronchium)の炎症の意味。
tuberculosis 結核。ツベルクリン(tuberculinum)に対する反応で診断できる。ツベルクリンというのは、結核菌を培養・殺菌・濾過(ろか)した液のことです。
gaster 胃。「ガスター」という胃薬がありますね♪ラテン語は「ガステール」。
virus ウィルス 毒
lingua(リングア) 舌。ここから派生して「言語」の意味もあります。
日常語、商品名など
また、ラテン語由来・起源とされている日常語、商品名なども、実は、たくさんあります。「共通言語」ということもありますが、何となく格式があって、音の響きも格好いい♪というのも理由としてあると思います。ただ、商品名や会社の名前などは、採用した言葉の時代、語形、解釈などから、微妙なものもあるようです。
a.m.(ante meridiem アンテ・メリディエム) 午前
p.m.(post meridiem ポスト メリディエム) 午後
cf.(confer コンフェル) 比較・参照せよ
nivea(ニベア) は「雪」ないし「雪のように白い」の意
prius(プリウス) は「~に先立って、先駆け」の意
bellum(美しい)+ mare(海)で Bellmare (ベルマーレ)
resona(りそな) は「共鳴せよ、響き渡れ(命令形、単数)」の意
発音・文法など
細かくみていくとキリがないので、また別の機会に譲るとし、ここでは簡単に特徴だけ書いておきます。
アルファベットは、23文字です。I(J)、V(U)が被り、Wがありません。「ヴ」の音がなく、上の例で挙げたように、virusで、「ウィルス」です。
発音は、基本的に「(まさに)ローマ字式」です。日本人には親しみやすいといえます。ただ母音の長短、アクセントには、注意が必要です。
文法的には、難解なところもあるのですが、単語自体の「語形が変化」するという基本的な特徴があります。また、動詞は、人称、数、法(直説法・接続法・命令法・不定法)、相(能動相・受動相)、時称に応じて、変化(活用)するなど、後の各言語の原形ともいうべきものがみられるのですが、詳しくは、また別の機会に書きたいと思います。
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以上、ホントにザッとですが、ラテン語について書いてみましたが、多くの言語が存在するけれども、各言語が、別々に成り立ち、存在しているものではなく、互いに影響し合い、底流の部分では繋がっているんだ 、という意識を持つことは、多言語を学ぼうとする上でも、また、いずれかの言語を究めようとする上でも、とても大事な視点であると思います。
ラテン語、ちょっとカジってみませんか?
Pax mundi per linguas (パックス ムンディ ペル リングアス)
ラテン語で、「多言語を通じて世界平和を」 です。
(参考:はじめてのラテン語 大西英文著 講談社現代新書)
2019年8月25日
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